ALOS-2搭載 地球観測用小型赤外カメラ(Compact Infrared Camera:CIRC)の初画像について
地球観測用小型赤外カメラ(CIRC/シルク)は森林火災や火山、都市部のヒートアイランド現象の観測を目的とした赤外センサで、ALOS-2には技術実証機器として搭載されています。2014年7月4日から7月14日にかけて機器健全性等を確認するために行われた初期チェックアウトおよび、その後に撮像されたCIRCの初画像を公開します。なお機器の状態はすべて正常であることが初期チェックアウト期間で確認されています。今後の校正検証期間において温度精度等の確認を行い、12月ごろ一般へデータを公開する予定です。
CIRCによる夜間の中四国地方の画像
図1はCIRCによって撮像された夜間の中四国地方の画像です。撮影時間は日本時間の深夜23時44分ごろですが、夜間でも撮像できる赤外線カメラの特長をよく表した画像と言えます。画像の色は黒、青、赤、黄色の順番で温度(輝度)が高いことを示しています。
図1 CIRCによって撮像された夜間の中四国地方の画像(日本時間7/11 23時44分ごろ)
図2は図1のAの領域を拡大したものです。赤外線の画像は対象の温度を反映しており、大山を代表とする中国山地の山々は温度が低いため主に青で表示されています。また宍道湖、中海も見えており、日本海と温度が違っていることが分かります。
図2 図1の領域Aの拡大
図3は図1のBの領域を拡大したものです。瀬戸内海の島々の他、海面の温度分布が捉えられています。また福山市や倉敷市の温度が他に比べて高めに表示されていることが分かります。これは製鉄所等の工業地帯が温度が高いためと推測されます。
図3 図1の領域Bの拡大
図4は図1のCの領域を拡大したものです。高知市を流れる仁淀川が太平洋に流れ込む様子が分かります。また上空の雲は温度が低いため主に黒で表示されています。
図4 図1の領域Cの拡大。
CIRCによる日中のシカゴの画像
図5はCIRCによって7月21日に撮像された日中のアメリカ/イリノイ州、シカゴ市周辺の画像です。撮影時間は現地時間の昼13時40分(CST夏時間)ごろです。日中の画像では、水面と陸域の温度差がより大きくなるため、図1に比べて陸域と水域の区別がはっきりとついています。
図5 CIRCによる日中のシカゴの画像(現地時間 7/21 13:40ごろ)
図6は図5のAの領域の拡大図です。市街地が温度が高めに表示されていることが分かります。CIRCのデータはこのような都市部のヒートアイランド現象の把握にも活用していく予定です。
図6 図5の領域Aの拡大
図7は図5のBの領域の拡大図です。東西南北方向に碁盤目状に走っている道路の様子も分かります。CIRCの分解能(約200m)は道路の幅(広い所でも約60m)に比べて大きいですが、日中で道路と周辺の温度差が大きいこと、碁盤目状に規則正しく道路が張り巡らされていることにより、道路のパターンも見えていると推測されます。
図7 図5の領域Bの拡大
CIRCによるカリフォルニア森林火災の検知結果
図8はCIRCによって7月27日に撮像された夜間のアメリカカリフォルニア州周辺の画像です。撮影時間は現地時間の深夜00時20分(PST夏時間)ごろです。カリフォルニアでは現在森林火災が頻発しており、衛星からもいくつかの火災が検知されています。図7左の図はCIRC画像にSuomi NPP衛星に搭載されたVIIRSセンサを使って火災を検知を行った結果を重ねたもので、赤は7月28日現在で6時間以内に火災が検知された箇所を示しています。
図8 CIRCによる夜間のカリフォルニア州の画像(現地時間 7/27 00:20ごろ)
図9は図7の白枠の領域の拡大図です。VIIRSセンサを用いて検出されたホットスポット(周りより温度の高い場所)とほぼ同じ位置に温度の高い黄色の領域があることが分かります。このようにしてCIRCは森林火災検知を行うことで、早期検知による森林火災の初期消火や、延焼地域の把握に役立てていく予定です。
図9 図8の白枠の拡大