CIRCの仕様と校正
CIRCの仕様と校正
このページはCIRCの仕様と校正についてまとめています。
このページは平成25年度JAXAインターン生の相川美紗さんにより製作されました。
CIRCの仕様
地球観測用小型赤外カメラ(CIRC/シルク)は森林火災や火山、都市部のヒートアイランド現象の観測を目的とした赤外センサです。東南アジアやシベリアで頻発する森林火災は地球温暖化や気候変動に影響を与えると考えられており、早期検知が必要となります。CIRCによる宇宙からの広域の監視によって、森林火災の早期検知、位置の特定をすることが可能となります。
CIRCの特徴は非冷却赤外検出器、アサーマル光学系、及びシャッタレス方式を採用していること、更に民生品を積極的に利用していることであり、そのため小型・軽量・低消費電力(★)・短期間で低コストの開発を実現することができます。また、これらの利点を活かし、将来的には複数の衛星にCIRCを搭載することで、より高頻度な観測を行いたいと考えています。
CIRCは現在、2013年度打ち上げ予定の陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALSO-2)、2014年度打ち上げ予定で国際宇宙ステーションに設置される高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET)に搭載される予定です。
非冷却赤外検出器について
CIRCは非冷却赤外検出器(マイクロボロメータ)を用いています。非冷却赤外検出器とは、その名の通り、冷却する必要のないタイプの検出器です。赤外線が入射することによる素子のわずかな温度上昇を電気信号に変換して検知することで、赤外線の検出を行います。冷却型に比べて感度は劣りますが、冷却機構を必要としない分、小型・軽量・低消費電力という大きな利点があります。
このような非冷却赤外検出器は、地球観測用としての実績は多くありませんが、惑星探査用として広く利用され始めています。CIRCは地球観測用の非冷却赤外検出器としては最大のフォーマット(640×480)であり、このように非冷却型の多様な地球観測ミッションへの応用が今後も期待されます。
CIRCの校正
CIRCの打ち上げに先立ち、ALOS-2搭載用、CALET搭載用の両PFMを用いて地上校正試験を実施し、ラジオメトリック性能については、等価雑音温度差(NEdT)、固定パターンノイズ(FPN)、および校正精度の確認を行いました。
ターゲット(黒体)温度とCIRCの温度を変化させて様々な温度環境下で画像を取得し、補正用データベース(迷光成分をCIRCの温度関数とした際の補正係数と黒体温度を得るためのゲインデータ)の作成、及び補正アルゴリズムを構築しました。補正アルゴリズムは、①bad pixel補正(まわりと大きく数値の異なる画素を周辺の平均値を代入する)、②ダミー補正(回路起因のノイズを除去)、③迷光補正(迷光補正係数を用いて迷光成分を除去)、④ゲイン補正(ゲインデータを用いて輝度値を放射輝度・温度に変換)という4つの補正から成ります。
ラジオメトリック補正後の画像から、ALOS-2搭載用はNEdT:0.19K、FPN:0.27K、CALET搭載用はNEdT:0.18K、FPN:0.21Kとなり、仕様(NEdT:0.2K以下、FPN:0.3K以下 @300K)を満たしていることがわかりました。また、補正用データベースを用いたラジオメトリック補正の結果、ターゲット(黒体)温度と補正後の画像の温度の差がALOS-2搭載用は2.0K以下、CALET搭載用は2.8K以下となり、仕様である4Kを満たしていました。下図のように、補正前はムラが生じていますが、ラジオメトリック補正によってフラットな画像を得られることがわかります。
CIRCの観測
CIRCは森林火災、火山、ヒートアイランド現象等の観測を主目的としています。森林火災については過去のデータから月毎に火災検知の多いエリアを抽出して観測を行います。また、火山については国内外の活動が活発な火山を中心に、さらにヒートアイランド現象については国内都市部を中心に観測を行う予定です。
CIRCをALOS-2に搭載した場合、高度600kmから、1シーンで128km×96kmの広さを観測でき、分解能は200mとなります。ノミナル(通常)観測では右図のように、16シーン連続して撮像し、衛星進行方向約1500kmにわたって観測することが可能です。また、1日の観測シーン数は平均約420シーンで、火山等に着目した場合は週1回、森林火災エリアの場合は週2~3回程度観測を行えます。今後、CIRCを複数の衛星に搭載することでより高頻度な観測が可能になると期待されます。