ALOS-2搭載CIRCの初期校正運用結果について

 ALOS-2搭載CIRCは打上後の初期チェックアウト終了後から2014年12月の間を初期校正運用期間として、プロダクトの校正・検証を行ってきました。このページではALOS-2搭載CIRCの初期校正運用結果について紹介します。

結像性能確認

CIRCの結像性能はModulation Transfer Function(MTF)によって評価されました。MTFとはカメラの結像性能を評価する指標です。地上校正でのMTF測定果についてはCIRC papersをご覧ください。軌道上でのMTFはエッジ法を用いて測定されました。図1はCIRCにより撮像された地表面のエッジ画像を示しています。エッジ法ではこのような直線性の良い地表面の画像のエッジを用いてMTFを求めます。図2はエッジ画像から抽出されたEdge Split Function(ESF)から求めたMTFを導出する過程を示しています。ESFを微分することによりLine Split Function(LSF)を求め、LSFをフーリエ変換することによりMTFが導出されます。軌道上のMTF測定結果からCIRCの結像性能は地上と比較して変化はなく良好な性能を示していることが確認できました。

CIRCによるエッジ画像

図1 CIRCによる地表面のエッジ画像

エッジ画像から求めたMTF

図2 (左)図1のエッジ画像から求めたEdge Split Function(ESF)とLine Split Function(LSF)。(右)LSFをフーリエ変換して求められたModulation Transfer Function(MTF)。

ラジオメトリック性能確認

ラジオメトリック校正では、CIRCで観測した輝度(温度)精度が所定の校正精度を満たしているかを評価します。CIRCのラジオメトリック校正は以下の3つの方法で行われています。

  1. 自動水温測定データおよび現地測定のデータを用いたモニタサイトとの比較
  2. CIRC地上検証用モデルを用いた航空機検証結果との比較
  3. 他衛星のデータとの比較

ここでは1のデータを用いて校正精度の検証を行った結果を示します。自動水温測定データとの比較では霞ヶ浦、宍道湖、Lake Tahoe(アメリカ、カリフォルニア州)の水温測定データと現地の気象データ(客観解析データ)を用いてCIRCの観測時刻における大気上端での輝度(温度)を求めます。現地測定データでは実際に現地に赴き水温、地表面温度を測定するとともに気象データを得るためにラジオゾンデ等を用いて大気プロファイルを測定します。現地測定は茨城大学・外岡研究室の協力の元、霞ヶ浦、Railroad Valley(アメリカ、ネバダ州)で行われました。これらをCIRCで観測した輝度と比較することで校正精度を確認します。図3(左)は横軸にCIRCの輝度温度、縦軸に各測定地点での大気上端の輝度温度を示しています。水色の丸は地上校正を元にした結果、紫の×印は軌道上校正の結果を用いて補正した結果です。これらの補正により、図3(右)の通りCIRCの輝度温度精度は±4Kの範囲であることが確認できました。今後航空機検証結果や他衛星データとの比較などの軌道上の校正データを積み上げて最終的に輝度温度精度を±2Kの精度まで向上させることを目標としています。校正検証等の詳細はCIRC papersをご覧ください。

CIRCのラジオメトリック校正検証結果

図3(左)CIRCのラジオメトリック校正検証結果。水色の丸は地上校正を元にした結果、紫の×印は軌道上校正の結果を用いて補正した結果。(右)補正後の輝度温度の残差。